身体にムチ打ってむくりを乗り切れ

2019.03.19

一週間前から私は新築チームから外れ、豊郷町で工事させていただいております。

7間幅の上屋の奥に一段下がった二間半の中二階落ち屋根、下地改修の際、出来る限り不陸調整し引っ掛け桟葺きによる乾式工法で平伏せしていきます。

写真をご覧下さい!

築後相当年数の経過した古民家ですが、旧土葺き工法でもない、カラ葺きなのにこの綺麗な起り(むくり)を。そうです昔の大工職人さんが墨付け、刻んで、小屋組し野地を貼った段階で起りをつけているのです。

社寺に代表される反り屋根は中国や大陸から伝来された、いわば輸入された建築様式ですが、一方、むくり屋根は日本独自に発展してきた屋根の建築様式といえます。

反り屋根独自の曲線が、格式や荘厳を表現しているのに対して、むくり屋根は、低姿勢、丁寧さを表現しています。

日本人独自の精神性が浸透して、むくり屋根は日本の身分制度にも影響を与え、商人の家屋に積極的に取り入れられたと言われています。そして、むくり建築が代表的なのは「桂離宮」です。

我々が丁稚の頃はまだ工務店さんが元気で活気よかった、末期ではありましたが辛うじて竹の子が生えるように、あちこちで田舎普請が建ち、担当する瓦職人や親方と棟梁が、この起り(むくり)の加減、塩梅を打ち合わせしてたもんです。この野地起りを付けてもらった上に、瓦職人が絶妙の土加減で葺き手側も更に起りを付けてやると、素晴らしい起り屋根になったものです。

そして、そのような屋敷を建てられる施主様、特にお爺さんは、このむくり加減や雁足に特にうるさかった、、、素人さんが下手すりゃ今の洋物一辺倒な本職より屋根瓦を理解されていました。

ま、今日日の建売や和洋モダンな機械工作プレカット新築には無縁の話ですが。

今の時代、こういう技術を継承した大工さんて、我々の世界と一緒で、減少する一方でしょうね。

改めて日本建築の素晴らしさを痛感します。

登り4.7mを瓦並び46列46回アラフィフの身体にムチ打って、このむくりを越えていきます。この一週間、香港で買ったタイガーバームと百合油(リリーオイル)が就寝前、手放せなくなりました。加齢って嫌です(笑

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